メガバンクやネット銀行など様々な金融機関が数多く存在しています。
そのような中、こんな疑問があると思います。
疑問
地方銀行を活用するメリットはあるの?どんな人におすすめなの?
このような疑問について解説していきたいと思います。
10年間勤めた元銀行員が実体験を通してリアルをお伝えします。
この記事では、地方銀行はどんな人にメリットがあるのかが分かるだけでなく、地方銀行の実態や将来性も分かるようになります。

利用者(法人、個人など)によって地方銀行を活用するメリットが異なるのでそれぞれ解説していきます!
地方銀行を利用するうえで、「できる」地方銀行員とできる限り関わっておいた方が色々と便利です。
出世する地方銀行員の特徴などこちらのまとめた記事を参考に「できる」銀行員をしっかり把握しましょう!
目次
地方銀行とは
まず簡単に一言でお伝えします。
地方銀行とは
地域を営業基盤とする銀行のことです。
地方銀行には2種類あります。
第一地方銀行
一般社団法人全国地方銀行協会に加盟している地方銀行62行(2023年3月現在)を第一地方銀行と呼んでいます。
第一銀は各都道府県に一つはあります。
みなさんがよく馴染みがあり、聞き覚えのある銀行は第一地銀ではないかなと思います。

地方銀行のことを「地銀」と略して呼びます
第二地方銀行
一般社団法人第二地方銀行協会に加盟している地方銀行37行(2023年3月現在)を第二地方銀行と呼んでいます。
第一地銀と比べて数は少ないです。
第二地銀が無い地域もあります。

第一地銀の方が経営規模が大きく経営体力も強く、拠点数も第二地銀に比べて多いです。地元地域の第一地銀の口座を持っている人は多いのではないでしょうか。
ちなみに、地方銀行以外の金融機関もご紹介しておきます。
メガバンク
「三菱UFJ銀行」、「三井住友銀行」、「みずほ銀行」を指します。
都市銀行とも呼ばれており、首都圏には支店が多いものの地方には概ね1県に1つの支店(だいたい県庁所在地)体制となっています。
実はメガバンクでも支店がない地域もあります。

支店数(拠点数)が多いのは、首都圏:メガバンク、地方:地方銀行という構図になります。
ネット銀行
対面での店舗(支店)を持たず、インターネット上での取引を中心として営業している銀行です。
ネット銀行は店舗を持たないので人件費等のコストが低く抑えられるため、住宅ローンの金利や手数料を安くすることができます。

店舗が無いためITリテラシーが低い人(主に高齢者)は店舗のある銀行を使う傾向にあります。
地方銀行を活用するメリット
ここでは各種銀行がある中、地方銀行を活用するメリットを解説します。
利用者ごとに(法人・個人によって)メリットは異なりますが、共通して言えることがあります。
地域における対面店舗(支店数)の多さです
何か窓口で手続きをする際に、どこかしらに地方銀行の支店があります。
これがメリットになります。
ということで、利用者別に解説していきます。
法人
前提知識として、
企業が銀行と付き合う主な最大の理由は「融資」になります。(他にも会社の各種振り込みや支払いなどの理由もあります)
事業を営むうえで、「資金」は必要です。
その資金を全て会社の利益でまかなえれば良いのですが、工場を建設したり、設備を購入したり、本社を建て替えたりするなど事業を継続していくうえで様々な場面で「借入」が必要になるタイミングがあります。
そのとき、融資をしてくれるのが銀行になります。
ですので、企業は銀行に融資してもらうためにお付き合いしています。
この目線で、地方銀行を活用するメリットを挙げていきます。
将来的にメガバンクから融資をしてくれるための実績作り
「銀行が融資をしてくれる」ということは、すなわち「きちんと返済してくれる企業だと銀行が判断した」ということになります。
つまり、〇〇銀行から融資された(信用された)企業という拍が付きます。
融資をしてくれる銀行の企業規模が大きければ大きい程、企業の社会的信用度も高くなります。
そのためのステップとして、地方銀行を活用するメリットはあると思います。
企業規模の成長に合わせて、お付き合いする銀行を徐々に変えていった方が良いでしょう。
例えば
【創業期】日本政策金融公庫→【成長期】地方銀行→【成熟期】メガバンク
上記のようなイメージで銀行を活用していくと良いでしょう。
資金調達先の複数確保
銀行との付き合いは1つだけではなく、複数お付き合いをしましょう。
なぜかというと、いつもお付き合いしている銀行が融資をしてくれなかった場合に、資金を調達できなくなる可能性があるからです。
今まで口座も持っていないような銀行にいきなり事業資金を申し込んでも、満額の回答を得られるか分かりません。
融資審査の期間も通常よりも時間がかかるでしょう。
なのでできれば複数の銀行ともお付き合い程度に、少額の事業資金を借入しておくのが良いでしょう。
少額の事業資金しか融資できなかった銀行は、次回はより大きい金額で融資をしたいと考えています。
お付き合いの銀行にはその心理状態にさせておくと、いざメインバンクから融資を受けれなかったり満額の回答を得られなかった場合、役に立ちます。
硬貨の入出金・両替、大口振り込み時の支店・ATMの多さ
コンビニATMでは硬貨の入金ができません。
現金商売をしている法人はATMや支店の窓口で日々の売上を硬貨を含む現金の入出金をしています。
地方銀行の場合は支店併設のATMで硬貨入金が可能となっています。
企業は他にもレジなどで対応するために両替も必要です。
硬貨入金同様、地方銀行では両替業務も可能です。
両替手数料を設けている地方銀行が一般的です。

地域企業にとっては、その地域の支店数(拠点数)が多い銀行ほど近くでこれらの作業を行えるのでそれがメリットになります。
このあたりが対応できる銀行として、地方銀行が挙げられます。
他にも銀行店舗の営業時間外に売上金を預け入れられる夜間金庫を利用している企業もいるでしょう。
こちらも支店数(拠点数)が多ければ多いほど、地域企業にとっては助かります。
個人
個人の方があえて地方銀行を活用するメリットは正直あまり無いかなと思います。
わざわざ支店に行かなくてもできることがほとんどだからです。
ただ、ITリテラシーが低い人など一定数は対面店舗を望んでいる人もいるので、その場合には地方銀行の支店数(拠点数)が活きてきます。
そのような中、地方銀行を活用するメリットをあえて挙げるとすれば主に以下になるかと思います。
公共料金等の支払、給与受取口座
「公共料金支払い・給与受け取り」は銀行の基本的なサービスです。
地方銀行特有の業務ではないですが、地域での支店数(拠点数)が多いため近くに手続きに行ける容易さは地方銀行のメリットかもしれません。
公共料金支払
公共料金の支払いで「口座振替」を活用する場合があると思います。
口座振替可能な金融機関の一覧に、地方銀行は必ずと言っていいほど入ってます。
そういう面では地方銀行の口座を一つ持っておくのは良いと思います。

口座振替以外にもクレジットカード払いなどもあり、そっちの方がポイントも付くのであえて地方銀行の口座を活用するメリットは少ないかもしれません。
給与受取口座
地域企業にお勤めの方は給与の受取口座がその企業のメインバンクである地方銀行の口座に指定されているケースも多いと思います。
その場合には地方銀行の口座を持っていた方が良いでしょう。

同じ銀行内の振り込みの方が企業にとっては振込手数料が安く抑えられます
最近では「デジタル給与」も解禁されましたので、今後は地方銀行の口座をあえて活用するメリットはより少なくなってくるでしょう。
デジタル給与とは
デジタルマネー(電子マネー)を、会社と従業員の資金移動業者の口座間で移動することで賃金(給与)を支払う制度のことです。
大口振り込み
地方銀行のインターネットバンキングやネット銀行の振込限度額は1,000万円までが上限のところが多いです。
別途手続きをすれば振込上限を変更することも可能な銀行もあります。
こちらを参考にしてみてください。
そのあたりも踏まえると、下記に該当する方は支店(対面店舗)での振り込みをした方が良いです。
- インターネットでの高額な振り込みが不安な方
- 1,000万円よりも高額な振り込みをしたいがインターネットでの手続きが面倒な方
- インターネットでの振り込みができず、至急で振り込みをしないといけない方
- インターネットが苦手な方(ITリテラシーが低い方)
通帳と届出印を持って本人が銀行窓口に行けば、本人確認などはありますが振込上限は特にありません。
その場合は、やはり近くに支店がある方が便利なので、地方銀行のメリットが出てくるかなと思います。

ただし、年齢や振込金額などによっては、色々と根掘り葉掘りヒアリングをされて時間がかかるケースもあります。場合によっては、警察も来ることもあります。
※最近は振り込め詐欺も多いので銀行も警戒しています。
預金の安全性確保
これはお金持ちの方などに限定されますが、万が一銀行が破綻しても預金を保護する仕組みがあります。
例えば、
普通預金は金融機関ごとに預金者1人当たり、元本1,000万円までと破綻日までの利息等が保護されます。
詳細はこちらを参考にしてください。
つまり、
5,000万円を持っている方は1つの銀行に預金(普通預金)するよりも、5つの銀行に1,000万円ずつ預金(普通預金)しておけば、万が一金融機関が破綻しても自分の預金を守れます。
自分の預金保護の観点から、地方銀行を活用するのも一つのメリットかもしれません。
他にも、預金金利が付かない「決済用預金」の場合は、全額が保護されるのでそこに預けておくのも一つかもしれません。

「決済用預金」に預けると全額が保護される反面、預金金利が付与されないので資産運用の目線で言うと少しもったいない気もします。
ちなみに、
「資産運用」として地方銀行を活用することはあまりおすすめしません。
銀行員は資産運用のプロではありません。
最近ではこちらの記事のように金融庁からも資産運用業務からの撤退も提案されています。
銀行から提案されたものに何も考えず乗っかるのではなく、自分で考えて選択することが重要です。
金融リテラシーを高めるにはこの本がおすすめです。

資産運用を相談するなら証券会社の方がまだ良いと思います。
地方銀行の実態や将来性
銀行の本業はあくまで貸出業務という考え方
銀行の根幹となる収益源は「貸出業務」です。
預金を原資に貸出をする。
その利ざやで稼ぐことが、根幹であり本業だと銀行員は思っています。
銀行員は貸出業務を通して地域企業の発展、地域経済の活性化を担っている自負を持っています。
近年では「低金利」や「資金調達方法の多様化(クラウドファンディングなど)」でなかなか貸出業務が厳しいと言われていますが、それでも銀行の本業は「貸出業務」であると考えています。
特に今の経営層は普通預金の金利が5%~6%(今は0.001%程度)で貸出業務が好調だった時代を経験し、貸出業務で偉くなってきた方々なので、その業務が銀行の根幹であることは今後も変わらないと思います。
>>地方銀行の出世コース・出世するタイプは?出世するための方法から出世する割合など元地方銀行員がご紹介!
最近では、「コロナ」の影響で実は貸出業務が全国的にどこの銀行も伸びています。
理由は経済を回すため、企業の事業継続を支援するために積極的に資金繰り支援をしているからです。
「コロナ融資」または「ゼロゼロ融資」とも言われています。

銀行は世の中が不調(不景気)になればなるほど実は貸出業務が伸びるのです。
最近は貸出業務以外にも注力し始めている
銀行の本業は「貸出業務」であるという考え方は、別に間違いではないと思います。
銀行の存在意義というのを考えると、貸出業務が無くなった瞬間に銀行ではなくなると思います。
一方、貸出業務で稼げる時代を経験していない今の若い世代を中心に、このままでは銀行はダメになると考えている人も多いのが実態です。
貸出業務だけやっていても稼げない、ましてや人口減少・少子高齢化時代で地方はどんどん衰退して、お金を貸せるところが少なくなってきている現状に、危機感を感じている人もいます。
こういう背景もあり、最近では地方銀行でも「貸出業務」以外に事業承継・人材紹介・SDGs・DX支援のコンサルティング業務など様々な「非金融業務」に手を伸ばしています。
銀行の中でもこの「非金融業務」に対する考え方が人により異なり、以下のように様々な声が挙がっています。
「非金融業務」を通じて最終的には「貸出業務」(本業)につなげるべきだ
今の時代に合わせて銀行の本業を見直していくべきではないか
手広く色んなことをやり過ぎて現場は覚えられず疲弊しています
銀行の本業は伝統的な貸出業務のままで良いのか、新たな業務の柱を育てていかなければいけないのかというところが重要になってきます。
そこは各銀行によってそれぞれの経営判断になるかなとは思いますが、そこで周りよりも早く覚悟を持って動ける金融機関が生き残っていくと思います。
先進的な銀行にあとから付いていくだけの銀行はいずれ淘汰されます。
むしろ淘汰されるべきです。
地方銀行の改革が必須
地方銀行の取り巻く環境は厳しいのです。
地方銀行の改革が必要で金融庁もそれを求めています。
こちらの記事に記載されている金融機関のあるべき姿には非常に共感します。
金融機関は“お金を融通する”と書きますが、本当にやらなきゃいけないのは“知恵を融通する”こと。【金融業】→【知融業】
金融機関が知恵を出すのではなく、知恵を持っている人たちを見つけ、その知恵を融通し合って地域の企業を成長していただく、地域を元気にしていただくことをやるのが、本当の金融機関の仕事。
その事例として、ここで一つ地方銀行の先進的な取組みを挙げます。
石川県に本店のある「北國銀行」です。
「金融DX」という面で先進的な取り組みをしています。
社内システムだけでなく取引先の業務改善支援として、銀行員がITコンサルティングを行うなどの取組みを実施しています。
このように、地域企業の成長・発展に向け、金融にこだわらずに支援していく姿勢が地方銀行には求められます。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
利用者(法人や個人)によって細かくは異なりますが、地方銀行を活用するメリット(優位性)は支店数(拠点数)の多さです。
最近では、インターネットなどの技術の進歩に伴い銀行窓口に行かなくても手続きができるようになってきています。
しかし、利用者側のリテラシーが低かったりインターネットでの取引に不安を感じている方々は、今もなお対面店舗のニーズが一定数あります。
そこで活躍するのが、地域での拠点数の多い「地方銀行」になります。
他にも、上記で挙げたメリットに共感する利用者は地方銀行を活用しても損は無いと思います。
地方銀行も変わっていかなければいけないことを自覚しています。
そして、
地域の成長無くして地方銀行の成長は無いということも自覚しています。
今後も地方銀行は「金融業務」のみならず「非金融業務」にも注力していくと思います。
そうなれば、今は取引をするメリットは無い方も多いかもしれませんが、今後はより地方銀行と取引をするメリットを享受する方が多くなる可能性もあるかもしれません。
口座を開設しないまでも、地元地域の金融機関の動向を暖かい目で見守ってあげてください。
地方銀行を応援すれば、地元地域を応援することに繋がります。
面白い取組みがあったら応援してあげてください。
ということで、
最後までお読みいただきありがとうございました。
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