銀行への就職は安泰ではなくむしろリスクと言われ、地方銀行への就職はやめとけと叫ばれている昨今、本当に地方銀行への就職は辞めた方が良いのか。
これから地方銀行に入ろうと考えている方や地方銀行で働くことに興味を持っている方々向けに、就職はやめたほうが良い理由や逆に地方銀行に入って良かったなど10年間勤めた元銀行員がリアルにお伝えします。
こちらの記事を参考にすれば、地方銀行への就職に関しメリット・デメリットを理解し、自分自身納得感を持って地方銀行への就職を決断できるでしょう。

では早速行きましょうー!
目次
地方銀行への就職はやめとけと言われる理由
当時は就職ランキングでも上位に名を連ねていた地方銀行が今では不人気業界になっています。
まず最初に、なぜ地方銀行への就職はやめとけと言われるのかについて理由をお伝えします。
ノルマ
色々なサイトでも良く書かれていますが、ノルマが厳しいという理由が大きいと思います。
具体的には、以下のあたりかと思います。
- えげつない数字の個人ノルマがある
- 負うべきノルマ(預金、融資、資産運用、クレジットカードなど)の種類が膨大
- 達成できないと激詰めされる
- ノルマ達成するために顧客が「¥」に見えてくる
- ノルマに疲弊して何のために仕事をしているのか分からなくなる
これを見ると誰も銀行なんて入りたいと思う人はいないです。
しかしここで皆さんにお伝えしておきたいのは、実態は正直そこまで厳しい訳ではないということです。

ここからは実際に私が働いて感じた「ノルマ」に対する印象を書いていきます。
ノルマは「個人」よりも「支店(営業店)」単位の方が重視されている
そもそもノルマは本部で予算策定し各支店に目標が半期ごとに配賦されます。
そこから支店内の各グループ(融資、営業、窓口相談など)に目標が割り当てられます。
そして各個人に目標が割り当てられます。

そもそもノルマは支店で達成することが重要です。(支店長の出世がかかっています)
したがって、そもそも支店のノルマが達成しているのであれば個人の達成状況は正直支店長は興味無いです。
あまりにもやらなすぎると冷ややかな目で見られたりすることなどあるとは思いますが、個人に対して激詰めは正直あまりないです。
一方、融資グループや営業グループの責任者は支店長から激詰めされる場合もあるかもしれません。
その各グループの責任者がグループ内の担当者に激詰めするタイプの場合は個人でも詰められる可能性はあるかもしれません。(人によりけりです)
こればっかりは上司ガチャです。
と言っても、今の時代個人の担当者に激詰めしたらパワハラなどで訴えられる可能性もあるのであまり詰められることは無いと思います。
逆にパワハラなどで訴えたりしなそうな中間管理職世代については、安心して支店長が詰めることができます。
こんな感じでノルマは個人よりも支店単位での達成が重要です。
企業体質
次に銀行の企業体質について触れていきます。
必要以上に決まり事やルールを守ることが重要
銀行は信用が第一です。
信用を体現するには「約束事」を守ることが重要
約束事にも色々あります。
規則を守る、規則を守る、マナーを重んじるなどなど。
顧客に対して「約束事」を守るのは当然ではありますが、銀行内でもそこが重要視されています。

逆に言うと、業務上のルールや期限を守りさえすれば一定程度優秀と見なされます。
なぜかというと、意外にもルールや期限を守れない人が多いからです。
上司からの細かな指示・命令など(あれ〇〇に出しといて、△△しておいて)、なぁなぁにやり過ごす人が多いからです。
飲み会の時に遅れるなど他愛もない約束事をなぁなぁにする人は意外に周りは見ています。
このように一見簡単なように思えることも、自分を律しないといけないので実行しようと思うと難しいものです。
こういうところが銀行が敬遠される理由の一つです。
縦割り文化で基本的に自分の守備範囲の仕事しかしない
銀行員は常に同期と比較されます。
良い意味で言うとライバルですが、悪い意味で言うと同期内の出世競争です。
この意識が新入行員の頃からあるので、常に評価されるように行動します。
銀行内で評価されるには、自分の担当業務(部署)で成果を上げることが重要
厳密に言うと、成果を上げることしかやりたくないのが本音です。
自分の業務範囲外の仕事をやろうとは決してしません。
誰かが困っていても、基本的には手を差し伸べません。
そのボール(仕事)を拾ったら負けだからです。
銀行員はいかに自分の業務範囲外のボール(仕事)を上手く人に擦り付けられるかが重要になってきます。
ボールを拾ったりしてしまうと、上司によってはうちの業務じゃないと言って、拾った行員に対し詰める人もいます。

自分の意見ではなく所属する部署での立場でしか意見を言わない
これは「自分の守備範囲しか仕事をしない」というのと似ています。
自分がどうしたいかではなく、その部署に所属する立場としての自分ならどういうのが正解かという目線でしか会話が成り立たない人が多い
こういう人こそ飲み会の席で、本当はあんなこと言いたくないんだけどさぁーと言ってきます。
まぁいわゆる、本音と建前ですね。
自分の所属する部署の立場でしか意見が出来なくなると、一定程度は出世できても途中で止まります。
それは「経営目線」が無いからです。
自分の所属部署の目線を超えて、銀行としてどうしていくかという目線を持った意見が無いといけません。
そのうえで、自分の考えなどもきちんと織り込みながら意見を言える人が本当に上に行きます。
基本的に仕事は辛くつまらないものという認識
「仕事はつまらないもの」
この認識は全員に刷り込まれています。
前提条件として仕事はつまらないものであるという状態なので、正直積極性はみんな無いです。
ただ、アピールも含めて積極性を出す人もいます。
「嫌な仕事をいかに早く終わらせつつ出世できるか」
これが銀行員の永遠のテーマです。
正直これが生きがいになっている人が多いと思います。

将来性
ここからは地方銀行の就職が敬遠される理由の一つでもある「将来性」についてお伝えしていきます。
低金利
銀行は預貸ビジネスです。
顧客から預かった預金を原資に地域企業に貸出し(融資)を行った利ザヤが収益源となります。
2016年頃から始まったマイナス金利の影響により貸出金利がかなり低金利に推移する時代に突入しました。
低金利ということは銀行の収益が減少傾向にあるということ、つまり経営状態が悪化しているということ
このような状態もあって、地方銀行は本業(貸出業務)以外の事業として各種手数料ビジネスを拡大し始めております。
例えばで言うと、人材紹介・事業承継・商社・ICTコンサル・結婚相談などです。
この状況に対し、本業収益が悪化して他の事業に手を出したところで上手くいくはずがない、地方銀行はもう終わりだというネガティブな風潮が蔓延しているのもあり、就職先として敬遠されているのかもしれません。
一方、ポジティブな見方をすると「地域企業の経営コンサルタント」ということ役割として、貸出という側面以外からも多角的に経営支援していくというスタンスは金融機関としてはあるべき姿なのではないかとも個人的には思います。

また、最近ではマイナス金利解除や定額減税による国の賃上げ施策などを追い風にいよいよ低金利時代から脱却できる可能性が出てきました。
つまり、本業収益が改善し経営もより一層安定していく方向に進むかもしれません。
低金利時代からの脱却による影響として、今後は生き残る銀行と淘汰される銀行が出てくると考えております。
本業回帰にのみ注力していく銀行は淘汰されていくでしょう。
もう少し詳しく言うと、スポット的に本業が稼げる状況になったからと言って、銀行自体のビジネスモデルを本業回帰に全振りする金融機関は淘汰されていくと思います。
本業収益が改善していくことを追い風として、本業以外のビジネスをより強固なものにしていく覚悟を持って改革を進められる銀行は生き残ると思います。
貸出業務以外の側面からも総合的に支援できるような(生き残れる)地方銀行は就職先としては優良なのかもしれません。
地方の衰退
これはみなさん既に周知の事実だと思います。
地方の繁栄があってこそ地方銀行は成立する、いわば地方と運命共同体の存在
主に以下の点が地方衰退により地方銀行の将来性に懸念が生じている要因かと考えられます。
人口減少と高齢化
総務省の統計によれば、日本の地方では人口減少が進行しています。
特に地方の市町村では年間で数千人単位の人口減少が見られ、若者の流出と高齢者の増加が顕著です。
これにより、地方の消費者市場が縮小し、地方銀行の顧客基盤も細くなっています。
地方の経済成長の停滞
地方の経済成長は長年低迷しています。
総務省のデータでは、地方の多くの地域で一人当たりの所得が全国平均を下回っており、経済成長が鈍化しています。
これにより、地方企業の業績悪化や倒産が増加し、地方銀行の融資業務にも影響を与えています。
不動産市場の低迷
地方の不動産市場は長期的に低迷しています。
不動産価格の下落や流動性の低下により、地方銀行が担保として取る不動産の価値が減少しています。
これにより、地方銀行の融資活動にリスクが増大しています。
ネット銀行などの台頭
ネット銀行の台頭が地方銀行の将来性を脅かしています。
ネット銀行などの最先端なサービス・取組みの二番煎じ
主な要因は以下のとおりです。
ネット銀行の成長と市場シェアの拡大
日本銀行の統計によれば、ネット銀行の総資産は増加傾向にあります。
過去10年でネット銀行の資産は数倍に成長しており、預金や貸付金の残高も増加しています。
ネット銀行は低コストな運営を可能にすることで、競争力のある金利や手数料を提供しています。
これにより、地方銀行の顧客層を奪っています。
地方銀行の収益悪化
地方銀行の業績は近年厳しく、低金利環境の下での収益確保が難しくなっています。
金融庁のデータによれば、地方銀行の経常収益は近年減少しており、純利益も低迷しています。
ネット銀行との競争により、地方銀行の金利や手数料の引き下げが求められており、収益性の低下が進行しています。
デジタル化への対応の遅れ
ネット銀行は、オンラインサービスやスマートフォンアプリを活用した先進的な金融サービスを提供しています。
一方、地方銀行はこれらのデジタル技術への対応が遅れているため、若者を中心にネット銀行に顧客を奪われています。
総務省のデータによれば、インターネットバンキングの利用率は年々増加しており、地方銀行の顧客がネット銀行に移行している可能性があります。
店舗網の維持コスト
地方銀行は広範な店舗網を維持しているため、運営コストが高くなっています。
ネット銀行は実店舗を持たず、オンラインでの取引が中心であるため、コスト効率に優れています。
このコストの差が、地方銀行の競争力低下につながっています。
顧客基盤の変化
ネット銀行は、利便性の高いオンラインサービスを提供することで、若年層やデジタルネイティブ世代を中心に急速にシェアを拡大しています。
これにより、地方銀行の顧客基盤が徐々に縮小しています。
以上のような要因により、ネット銀行の台頭が地方銀行の将来性に影響を及ぼしています。
地方銀行は、デジタル化への対応や独自の強みを生かした差別化戦略を進めることが求められますが、競争の激化と市場環境の変化により、その道のりは険しいものと考えられます。
AI技術等による影響
近年、AI技術などの先進的な技術の導入により、地方銀行の将来性が懸念されています。
地方在住の比較的IT・金融リテラシーの低い方々も顧客として一定数存在し無碍にはできない悲しき地方銀行
以下では、AI技術による業務効率化が地方銀行に及ぼす影響をデータとともにお示しします。
AI技術の導入による効率化
AI技術の導入により、銀行業務が大幅に効率化されています。
例えば、ローンの審査や口座開設などの手続きにAIを活用することで、処理時間が短縮されるだけでなく、正確性も向上します。
総務省のデータによれば、銀行業界におけるAIの活用事例が増えており、AI導入による業務の自動化が進行しています。
銀行員の削減
AI技術の進展により、従来手作業で行われていた業務が自動化され、人員削減が可能になります。
金融庁のデータによれば、過去数年で銀行業界全体の人員数は減少傾向にあります。
地方銀行でも、AI技術の導入による人員削減の可能性が高まっており、コスト削減のために人員削減の検討が進んでいるとの報告があります。
顧客との接点減少
AIを活用したオンラインチャットボットや自動応答システムが普及しているため、従来の対面での接客が減少しています。
これにより、地方銀行の顧客サービスの在り方が変わりつつあり、地方銀行の特色である地域密着型のサービスが損なわれる可能性があります。
事業モデルの変化
AI技術の導入による効率化が進むと、地方銀行の事業モデル自体が変化する可能性があります。
従来の対面型の業務からデジタルチャネルを通じたオンライン業務にシフトすることで、店舗網の縮小や従業員数の削減が進むかもしれません。
地方銀行は、AI技術を活用して新たな収益源を見つけることが求められますが、その成功は不確実です。
競争環境の変化
大手銀行やネット銀行がAI技術を積極的に活用しており、競争環境が激化しています。
地方銀行はこれらの大手銀行に対抗するため、AI技術を導入して効率化を図る必要がありますが、経営資源が限られているため、厳しい選択を迫られるかもしれません。
以上のように、AI技術の導入による業務効率化は、地方銀行の将来性に不確実性をもたらしています。
地方銀行に就職して良かったこと
これまでは地方銀行に就職しない方が良い面などをお話してきました。
一方で今度は地方銀行に就職して良かったことも触れておきたいと思います。
ビジネスマナーなど社会人としての常識などを必要以上に学べる
そこら辺の一般企業よりも社会人としての礼儀やマナーは必要以上に身に付く
その理由としては、銀行は信用が命だからです。
信用を得るにはまずは礼儀やマナーが必須です。
どこの銀行も最初の1~2ヵ月間は研修所などに缶詰めで研修を実施します。


地域を知ることができる
地方銀行に就職することで、地域の文化や経済活動、顧客のニーズを理解する絶好の機会が得られます。
地元のコミュニティとの関わりを通じて、地域の特性や課題に対する理解が深まります。
これによって、地域に適したサービスやソリューションを提供する能力が高まります。

なんだかんだ言って恵まれている(給与や福利厚生など)
地方銀行はその地域の中では上位企業に位置し給与水準や福利厚生もその地域基準であれば当然に比較的上位
地方銀行は、その地域内の企業の中では社員への給与や福利厚生面で充実しています。
だからこそ、地元で働くことを意識している就活生はほとんど地方銀行に応募すると思います。
比較的若い年次のときから経営層と会話できる機会が多い
20代前半で地域企業の社長と話すことができ視座を広げられる
地方銀行はジョブローテーションが1年間ぐらいで概ね完了します。
そのうえで適性を見て営業係(個人または法人)なのか融資係(個人または法人)なのかに分かれていきます。
営業にしろ融資にしろ最初は「個人」顧客の担当からスタートすることが多いのですが、数年すると法人も担当し始めます。
早くて2年目、3年目くらいで法人担当になる人もいます。

転勤により色々とリセットできる
行内の人間関係や合わない取引先との関係性などを転勤によりリセットできる
定年まで定期的に引っ越しを伴う転勤があるのはデメリットかもしれませんが、転勤をすることで職場の人間関係が良い意味でも悪い意味でもリセットできます。
これは営業店勤務の場合、取引先についても同じことが言えます。
合わない取引先や過去に色々とやらかし気まずい取引先などとリセットできます。(転勤による引っ越しなどで物理的にも)
ずっと同じ場所で同じ取引先と同じ仕事をするのも辛いものがあります。
そう考えると転勤もあながち悪くないです。
ポジティブに考えると、転勤は新しい挑戦や経験を得るチャンスであり自己成長や幅広い視野を広げる絶好の機会となります。
また、まだ見ぬ地元の土地を知ることで、新たな出会いや学びが待っています。
精神力が強くなる
理不尽なことが多い中仕事をしていかなければいけないので精神力が強くなる
銀行で働くということは、理不尽なことが多い中仕事をしていかないといけないということです。
つまり、仕事を我慢だと考え心に蓋をして行動することが多くなると思います。
ちょっとやそっとのことではへこたれなくなります。
それは常に理不尽な世界で生きているので。
何が理不尽化というと、顧客から変なクレームが来たり、支店長からのトップダウンの命令があったりなど日々色々あります。
人によって理不尽の感じ方は異なるので一概には言えませんが、比較的一般企業よりも地方銀行の方が理不尽さは多いと思います。

地方銀行に入るための心得(就活対策)
地方銀行に入りたいと考えている方向けに元地方銀行員が心得をお伝えします。
自分も就活生のときにそのようなマインドで面接に臨みました。
まずは地元地域の活性化・地域貢献がマスト
これはまさにその通りです。
「地方」銀行というだけあって、まずは地域経済の活性化や地域貢献という想いがあることが大前提です。

精神力が強いこと・我慢強いことをアピール
銀行は色々な業務があるため、覚えることが多いです。
覚えるにしても、事務手続きを覚えるだけではなく営業店などの現場で学ばないといけないものもあります。
その中で顧客対応や先輩社員から教えてもらえるようにしておかないといけないので、体育会系の雰囲気に若干似ています。(正直人による部分もありますが)
誰しもが体育会系の人ではないものの、地方銀行の人事はそのような人間を好みます。
それでも、体育会系のような人間でなくても「やっていける」と思われるようなキャラクターやその理由などを面接で話せるようにしておきましょう。
「明るく・元気に」は最低限のマナー
これは地方銀行だからというわけではないですが、面接など「明るく・元気に」いることは大前提として面接が始まるといっても過言ではないです。
「明るく・元気に」の段階で面接官から違和感を持たれてしまうと、面接という限られた時間の中で不毛な部分に時間を取られてしまい、自分自身のアピールできる時間が無くなるリスクがあります。

まとめ
ということで、いかがでしたでしょうか。
地方銀行への就職は時代遅れ的なことを言う人もいますが、正直まだまだ安泰な部分があります。
一方で変化のスピードは遅いものの、昔の時代錯誤の銀行よりかは着実に変化し時代に合ってきているのではないかと思います。
もし地方銀行で働いてみることに興味があるのであれば、転職が当たり前の時代になってきているので、合わなければ転職するぐらいの軽い気持ちで是非一度チャレンジしてみるのも良いと思います。
地方銀行に入るタイミングはほぼ新卒でのタイミングしか無いかなと思うので、これから就活を迎える方などは是非一度検討してみてはいかがでしょうか。
新卒で銀行に入ると、ビジネスマナーが身に付きますし、転職する際も良い面に働くことが多いと思いますので、是非前向きに検討してみてください。(真面目とかしっかりしているとかのポジティブな印象が付きやすいです)
地方銀行で働いた経験はネガティブに働くことはあまりないと思うので迷ったら応募してみるのはありですね。
最後までお読みいただきありがとうございました!